経口避妊薬にもいろいろ種類があるのですが、現在日本で一般的に経口避妊薬として用いられている薬は、成分にエストロゲンとプロゲステロンという二つの女性ホルモンを含みます。これらのホルモンにより主に排卵を抑制し、着床を阻害することなどで避妊効果を生じます。経口避妊薬そのものが発作を増悪させる可能性はありません。
抗てんかん薬には酵素誘導作用といって、ある種の薬剤の肝臓での分解を促進する働きを有する場合があります。酵素誘導作用がある薬剤と経口避妊薬を合わせて内服した場合、経口避妊薬の肝臓での分解が促進され効果が減弱する危険があります。酵素誘導作用が強い抗てんかん薬として、フェノバルビタール、フェニトイン、カルバマゼピン、プリミドンが挙げられ、特に避妊作用が弱まることに対し注意が必要です。酵素誘導作用が無い薬剤として、エトサクシミド、バルプロ酸、ガバペンチン、クロナゼパム、レベチラセタム、ゾニサミド、ラコサミド、ビガバトリンが挙げられ、これらの薬剤は経口避妊薬の効果に影響を与えません。
またペランパネル、トピラマート、ラモトリギン、ルフィナミドは別な機序で経口避妊薬の濃度を低下させる場合があり、経口避妊薬の効果が減弱する可能性があります。
一方経口避妊薬はラモトリギンの肝臓での分解を促進するため、ラモトリギンの血中濃度を低下させる場合があります。従ってラモトリギン内服中に経口避妊薬を使用する際には、てんかん発作が増悪する可能性があります。
近年発売された緊急避妊剤(モーニングアフターピル)であるレボノルゲストレル錠は、一般的な経口避妊薬と異なりプロゲステロン系のみに作用する薬です。一般的な経口避妊薬ほど多くの報告はありませんが、やはり前述した酵素誘導作用がある抗てんかん薬(フェノバルビタール、フェニトイン、カルバマゼピン、プリミドン)およびペランパネル、ラモトリギンを併用した場合に効果が減弱する可能性が指摘されており、注意が必要です。
子宮内避妊器具(IUD)は酵素誘導作用がある抗てんかん薬の影響を受けないため、必要に応じて使用が考慮される避妊法かもしれません。