情報室てんかんに関する記事・情報源(雑誌や書籍の案内)を掲載します。

はじめに

1.はじめに

人は誰もが「健康で文化的な」生活をする権利を持っています。「健康で文化的な」生活はその人によって内容は様々ですが、その人なりにできる限り良い生活ができるようにと考えます。成人になれば精神的にも経済的にも自立した生活をしたいと考えるようになります。これは病気や障害の有無に関係なく生じる自然な欲求です。そのためには、生活を確立し維持するための手段を自身の力でとることが必要になります。しかし慢性に経過する病気や障害を持つ人が自立した生活を営むためには、種々の困難な点があったり、工夫が必要になります。自分の力で充分に生活を確立し維持していくことが困難な場合には、その補足の手段として社会資源を活用する場合もあります。ここではてんかん発作をもつ成人が生活するために利用できる医療制度と福祉制度について述べます。

2.適切な治療を継続して受けるために

てんかん発作のある人が日常生活を営むためには、適切な治療を継続して受けることが最重要課題になります。定期的に通院し、抗てんかん薬の処方を受け、必要であれば検査を受け、時には入院が必要となることもあるでしょう。つまり生活の中で常に医療費が必要になります。医療費に関する制度は患者さんが支払う医療費の負担を少なくし、安心して治療が継続できるように支える制度です。

てんかん治療のための医療費の制度として代表的なものが、外来の医療費の一部を公費で負担する「通院医療費公費負担制度(精神保健福祉法第32条)」です。この制度は外来の医療費のみを対象とするもので、入院した場合の医療費は対象になっていません。てんかんの治療全般にわたる医療費の負担を軽減する制度はまだ充分に整ってはいませんが、最近では「精神障害者保健福祉手帳(後述)」を取得することにより入院にかかる医療費についても助成が受けられる自治体もみられるようになっています。また小児慢性疾患や指定難病に該当する方は入院費の助成を受けることができます。

3.安定した生活を確立するために

適切な医療を受け、日々の生活の中で発作による受傷を防いだり、発作が出にくい環境を整えることが、日常生活を送るために必要です。毎日の生活では必要なものを買ったり、食事をしたり、電気料金や水道料金を支払ったり、時には友人と出かけたりと、ある程度の生活費が必要になります。生活費を得るための手段としては働いて給料を得ることなどが考えられます。てんかん発作が難治である場合、日常生活上常に発作による支障があり、充分な収入を得るための手段をとることが困難な場合が考えられます。その様な場合の生活費を保障する制度が「障害(基礎・厚生)年金制度」です。障害年金の制度の詳細については省きますが、年金の制度は社会保険制度であり、受給する条件として、(1)法定の障害の状態にあることと、(2)国民・厚生年金加入期間中に初診をしていることがあげられます(20才未満に初診日がある場合はこの限りではない)。障害年金を受給することによって一定額の収入が保障されるため、「すこし安心することができました」、「焦る気持ちが少なくなりました」という声を聞くこともあります。障害年金だけで生活を維持することは決して充分であるとは思えませんが、受給することで身体や精神的に負担のかかりすぎる仕事ではなく、余裕を持ってできる仕事を選べるようになったり、両親から援助してもらう分が減って精神的に楽になったと感じる場合もあるようです。

4.生活の質を充実させるために

これまでに医療費と生活費について述べてきました。生活をするためにはお金が必要になりますが、さてお金があれば良い生活ができるのでしょうか?「健康で文化的」な生活を送るには金銭面だけでなく住居の確保や社会参加、仲間づくりも大切です。自身の力で解決することが困難な場合は、それを補うための社会福祉サービスを利用することが有効な場合もあります。具体的な社会福祉サービスの利用について考える前に、1の節で少し述べました「精神障害者保健福祉手帳」について触れます。

(1)『精神障害者保健福祉手帳』とは?

現在の日本では、社会福祉サービスは高齢者、児童、障害者などの「生活のしづらさ」をもつ人を対象に給付されています。社会福祉サービスは、その対象に応じて必要となるサービスが法的に整備されています。そのため生活に必要なサービスを受けるためには、「そのサービスを必要とする対象者」としての判定を受けることが必要となる場合があります。サービスの対象となる人の一つに障害者がありますが、現在の我が国では「身体障害」「知的障害」「精神障害」の3つの障害の区分があり、てんかん発作により生活上の障害がある場合は「精神障害」の区分に入ります。そしてそれぞれの障害別に状態に応じて重度から軽度の等級区分があり、その状態に応じて利用できるサービスが異なります。必要なサービスを受けるために判定を受け、それにより交付されるものを「障害者手帳」といいます。つまり「精神障害者保健福祉手帳」とは、精神の障害を持つ人が生活するために必要となる社会福祉サービスを受けるために判定を受け交付される手帳ということになります。てんかん発作以外に手足の麻痺等がある場合は「身体障害手帳」、知的な障害がある場合は「療育手帳(自治体により名称が変わる場合あり)」の判定をそれぞれ受けることができます。

(2)利用できるサービスについて

「精神障害者保健福祉手帳」を取得することによって利用できる制度には、1)税金面での優遇措置、2)通院医療費公費負担制度(前述)、3)生活保護の障害者加算、4)自動車税の減免(注:等級によって異なる)、5)障害者雇用制度、があげられます。自治体によってはバス・鉄道の割引や医療費の助成がされたりしています。また手帳取得者に限定していないサービスもあります。生活の場については、精神障害者の生活訓練施設に入所し必要な生活訓練を受けたり、自立した生活が営める場合は福祉ホームの利用を検討することも可能でしょう(いずれも利用期限あり)。また家庭や地域で生活する場合には、日常生活上の心配な点について精神障害者生活支援センターや保健所で相談をすることができます。また能力に応じた社会参加の方法を検討することも必要です。就労を一つの社会参加の方法ととらえた時、就労が困難な状態であれば、その能力に応じて福祉工場、授産施設や小規模作業所などを利用しての社会参加という方法も考えられます。小規模作業所などでは作業を通しての仲間づくりを目的にしているところもみられますし、保健所のデイケアやソーシャルクラブ、てんかん協会の支部活動などで仲間同士のネットワークを作ることもできます。

(3)てんかんのある人の必要とするサービス

生活の質を向上するために、時には制度や援助を必要とする場合があることはこれまでに述べてきました。そしててんかんのある人が利用することができるサービスについても触れてきました。しかし現在あるサービスだけでてんかん発作をもちながら安心した生活が送れるかということについて考えたとき、答えは決して充分であるとは言えません。てんかん発作があることにより、屋外の移動に危険が生じる人もいます。また発作で転倒することで受傷するのを防ぐために保護帽を作製し着用することが必要な人もいます。発作が頻発することで既存のサービスを十分に利用することができない人もいます。現在の制度やサービスに加え、てんかん発作をもつことにより生じる「生活のしづらさ」を補えるサービス、つまりてんかんという病気のための独自のサービスが必要であると考えられます。近年の法改正によりてんかんをもつ人も社会福祉サービスを受ける対象者となりました。今後の課題は、現在のサービスをより充実させていくことと、てんかんのためのサービスを構築していくことであると考えられます。

5.おわりに

医療・福祉制度を利用するにあたって、まず自分の生活で問題になっていることは何であるかについて考えることが必要になります。そして自ら制度を利用するために相談をすることも必要です。相談する相手は家族であったり、サービス提供機関であったり、病院の主治医やソーシャルワーカーであったり、自分が相談しやすい人にまず話してみましょう。 相談の窓口では自分がどのような生活を望んでいるのかを伝え、どのような制度が利用できるのかを考えることが必要になります。そして具体的な制度が見つかったら、その制度を利用することで自身の生活がどのように変化するか、問題が解決されるのかを考えることも大切です。生活上の問題によっては、複数の制度やサービスを同時に組み合わせて利用することも必要になってくるでしょう。制度やサービスの利用は、自分がしたい生活をまず描くことから始まります。