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2.てんかん症候群

2.てんかん症候群

 患者さんによって様々なてんかん発作があり経過もそれぞれ異なりますが、中にはてんかん発作の出現年齢、発作症状、脳波異常パターン、画像検査、発達などが共通するグループがあります。これらの各グループをてんかん症候群といいます。症候群はそれぞれ、長期経過、薬剤選択、悪化させうる薬剤、治療終了後の再発率などに特徴があり、治療方針を考える上でてんかん症候群を特定することはとても参考になります。しかし患者さん全員を特定のてんかん症候群と診断できるわけではありません。また小児の場合には年齢と共に発作型や脳波所見が変わることがあり、成長に伴っててんかん症候群の名前が変化する場合も珍しくありません。以下に難治てんかんに関連する代表的な症候群について簡単に解説します。

・ウエスト症候群

 ウエスト症候群は、発作としてスパズム、脳波異常としてヒプスアリスミア、発達遅滞の3つの特徴のうち2つ以上を満たすものとされています。生後4~8ヶ月に発症する場合が多く、発症すると外からの刺激への反応が乏しく無表情になったり、おもちゃなどに対する関心が薄くなったりします。スパズムは四肢や体幹の瞬間的な筋収縮で、その際頭が前屈することを“点頭”といい、そのためウエスト症候群のことを点頭てんかんといったりもします。スパズムが短時間の間隔で繰り返し生じることを“シリーズ”といい、スパズムがシリーズを形成して出現する、といった言い方をします。頭部が前屈する特徴は座位をとると分かりやすくなり、スパズムが生じると泣き始める子も多いです。
ウエスト症候群に対する代表的な治療としてACTH療法が挙げられます。これは副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)を筋肉注射することで副腎皮質からステロイドホルモンの分泌を促し、その結果発作や脳波所見を改善させるものです。ACTHの使用量は施設や患者さんによって様々ですが、最初の2週間は連日投与し、その後次第に間隔をあけていく施設が多いようです。副作用として体重増加(食欲亢進)、睡眠障害、易刺激性、無感情、易感染性、電解質異常、高血圧、消化管潰瘍、脳萎縮、硬膜下血腫などが挙げられますが、重篤な副作用の出現は稀です。
その他の薬物療法として、ウエスト症候群に特化した抗てんかん薬にサブリル®(ビガバトリン)があります。この薬は結節硬化症に由来するウエスト症候群に特に有効とされていますが、その他のウエスト症候群に対しても効果が認められています。副作用として視野障害、視力障害などがあります。そのためビガバトリンの使用に当たっては、使用前から使用中にわたり指定された眼科で定期的に網膜電図検査や視野検査などを受けていただく必要があります。現時点ではそのような眼科専門医と連携のとれた登録医療機関でのみビガバトリンを使用することができます。ビガバトリン以外に、バルプロ酸、ビタミンB6、ゾニサミド、トピラマート、ラモトリギン、レベチラセタム、スルチアム、クロバザム、クロナゼパム、ニトラゼパムなど様々な抗てんかん薬を組み合わせながら治療していきます。
それ以外に食事療法(Q&Aてんかんと食事療法をご参照ください)や、原因となる脳の異常部位が明らかな例では病変切除術や脳葉離断術、また緩和を目的として脳梁離断術が実施される場合があります。
幼少期を過ぎると発作型がスパズムに代わって(あるいは加えて)強直発作が出現し、レノックス・ガストー症候群に移行する例もありますが、全例移行するわけではありません。また同様にスパズムに代わって(あるいは加えて)部分発作が出現し、ウエスト症候群から局在関連性てんかんへと移行する例もあります。

・ドラベ症候群

ドラベ症候群は乳児重症ミオクロニーてんかんとも呼ばれます。SCN1Aという遺伝子の異常が主な原因です。乳児期の主に発熱時や長い入浴後などの体温上昇が続いた際に、体の左右いずれか半分のけいれん(半身けいれん)、あるいは全身けいれんで発病します。けいれんは遷延する傾向があり、重積する場合もあります。成長に伴いミオクロニー発作や非定型欠神発作などが出現したり、光や模様によって発作が誘発されたりする方もいますが、全身のけいれん発作は全年齢を通じて出現する例が多いようです。
 治療は薬物療法が中心となり、バルプロ酸、スティリペントール、トピラマート、レベチラセタム、クロバザム、臭化カリウムなどを組み合わせて用います。ケトン食療法も有効な例があります。

・レノックス-ガストー症候群

1から8歳くらいに発症する症候群で、体幹や四肢に力が入る強直発作を特徴とします。強直発作の他に、非定型欠神発作、脱力発作、ミオクロニー発作など様々な発作を伴います。ウエスト症候群からの移行が有名ですが、すべてが移行例ではありません。治療は各発作型に応じて抗てんかん薬を選択します。代表的な薬剤として、強直発作にはバルプロ酸、ラモトリギン、ルフィナマイドが、非定型欠神発作にはバルプロ酸、エトスクシミド、ラモトリギンが、ミオクロニー発作にはバルプロ酸、プリミドン、クロナゼパム、クロバザムなどが用いられます。特に転倒を伴うような強直発作や脱力発作に対しては脳梁離断術が有効な場合があります。

・遊走性焦点発作を伴う乳児てんかん

 多くは生後6か月以内に発症する症候群で、目が片側に寄る、瞼・顔面や上下肢のけいれん、口部の自動症、無呼吸などといった様々な発作症状が、左右一定せず発作の最中にも部位や形を変えながら連続して出現します。発作頻度は次第に増加して毎日出現するようになり、しばしば重積します。発病前の発達は正常ですが、発病後発達は停滞し退行します。治療として臭化カリウムやケトン食療法が有効な場合がありますが、多くの抗てんかん薬は十分な効果を認めません。原因となる遺伝子がいくつか見つかっていますがもっとも頻度が高い異常はKCNT1で、この場合キニジンという通常不整脈に用いられる薬剤が有効な例もあります。

・早期乳児てんかん性脳症(大田原症候群)、早期ミオクロニー脳症

 多くは生後1か月以内に発症する症候群で、先天代謝異常症や皮質形成異常、遺伝子異常など様々の原因により発症します。いずれもサプレッション・バーストという脳波所見が特徴的です。主な発作症状は早期乳児てんかん性脳症(大田原症候群)ではスパズムであり、早期ミオクロニー脳症ではミオクロニー発作と部分発作です。発作は難治に経過し、ウエスト症候群へ移行する例もあります。

・ミオクロニー失立発作てんかん(Doose(ドゥーゼ)症候群)

 1歳から5歳までの間に多くの例が発症します。発病時の主な症状は全身けいれんですが、次第にしりもちをつくように転倒する“失立発作”や、失立発作にミオクロニー発作が先行するミオクロニー失立発作が出現し始め、これらの発作が頻発するようになります。頻回に転倒し頭や顎を受傷する機会も多く、頭部を保護する保護帽の着用を要する場合もあります。欠神発作や非けいれん発作の重積状態を伴う例もあります。治療はバルプロ酸やラモトリギンを合わせて用いられることが多く、ケトン食療法が著効する例もあります。

・徐波睡眠期に持続性棘徐波を示すてんかん(CSWS)

 3歳から6歳時に、睡眠中の部分発作や全般性強直間代発作で発病します。その後次第に覚醒中に、非定型欠神発作・ミオクロニー発作・脱力発作を生じるようになり、頻回に出現します。またてんかん発作のみならず、知的に退行したり行動上の問題を呈したりするようになります。脳波所見が特徴的で、徐波睡眠中に連続して全般性棘徐波を示します。この脳波所見は一般的に10~15歳で消失し、その後多くの例でてんかん発作も消失します。脳波異常や発作が改善するのに伴い、知的退行や行動の問題も改善する例が多いのですが、様々な程度で残存する場合もあります。治療はバルプロ酸、スルチアム、エトスクシミド、各ベンゾジアゼピン系抗てんかん薬(クロバザム、クロナゼパム、ニトラゼパム)などを用います。ACTH療法などステロイドが有効な場合もあります。

・後天性てんかん性失語(Landau-Kleffner(ランド-クレフナー)症候群)

 2歳から8歳時に、それまで正常に発達していた児がてんかん発作か失語で発症します。てんかん発作の頻度は多くない場合がほとんどで、中には発作を伴わない例もあります。主な発作症状は、非定型欠神発作や眼球偏位・瞬きといった部分発作、夜間の強直間代発作などを認めます。
 本症候群では失語が特徴的であり、まず聴覚失認といって言葉や生活環境における様々な音を聞いて理解する能力が障害され、その後発語も失われます。また多動や注意障害などの行動障害を伴う例もあります。
 脳波所見として徐波睡眠中に連続して全般性棘徐波がみられます。治療はバルプロ酸、スルチアム、エトスクシミド、各ベンゾジアゼピン系抗てんかん薬(クロバザム、クロナゼパム、ニトラゼパム)などを用います。てんかん発作は比較的容易にコントロールされますが、失語症状や行動の問題は改善・増悪を繰り返しながら遷延する例も多くありす。

 なお、これらのてんかん症候群は難病(指定難病)や小児慢性特定疾病に指定されており、さまざまな医療・福祉のサポートを得ることができます。詳しくは下記をご覧ください。
難病情報センター http://www.nanbyou.or.jp
小児慢性特定疾病情報センター http://www.shouman.jp