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第3章 意識が曇り、行動が変わる発作(焦点意識減損発作あるいは複雑部分発作)

意識がはっきりしないまま、いろいろな行動をとり、発作後にその時のことを覚えていない発作「焦点意識減損発作(以前は複雑部分発作と称していました)」について説明します。この発作の症状はとても多いので、代表的な症状について触れます。まず、意識が曇るだけの発作について説明します。

意識が曇るだけの発作

症状

まず、それまで行っていた行動が止まります。それは、「仕事を一休みする」かのような仕草であらわれることが多く、顔の表情や姿勢はあまり変わらないまま反応のない状態になります。さらに発作が進むと、意識の曇りが深くなります。たとえば、食事中では箸や茶碗をもったままぼんやりとうつ向いたりします。この発作は、数十秒から数分間で終わることが多く、発作終了後の行動は、ちぐはぐで動作もゆっくりしていて、的確な行動がとれないこともあります。完全に回復したあと、発作があったことに気づかないことが多いのですが、時には「何かがあった」と自覚していることもあります。

観察のポイント

この発作は、意識が曇る発作なので、意識の状態を観察する必要があります。名前を呼んだり、今日の日付や曜日、今居る場所などを質問して確かめるとよいでしょう。

対応

この発作では、意識の曇りが軽い場合、名前を呼んだり体を動かしたりして刺激すると、そこで発作が止まり、意識が回復することがあります。名前を呼んでみて下さい。また、発作中のことは覚えていないのですが、単純部分発作と見分けるために、発作後に発作中のことを覚えているか、本人に確認して下さい。

次に、意識が曇って一見、目的があるようで、実は目的のない動き(自動症)を伴う発作についてお話ししましょう。

意識が曇って自動症を伴う発作

症状

発作の始まりは、動作が止まり意識が曇ってぼんやりします。その後、意識の曇りが進み、様々な自動症が現れます。自動症そのものの持続時間は、2~3分程度です。たとえ長く続いても数分以内が通常です。しかし、自動症に続いてもうろう状態が30分以上から長時間に渡る場合もあります。発作中の記憶はなく、あっても部分的であり、発作後に発作中のことを思い出せません。また、思い出すことができてもきわめて不充分です。自動症について、代表的な症状をお話しします。

  1. 落ち着かない様子で体を動かす
  2. 舌をならす。舌なめずりをする。唇をなめる。唇を咬む。舌を突き出す。口をモグモグさせる。
  3. 顔をなでまわす。手をもむ。腕を振り上げる。着物の端をつまむ。ボタンをはめたりはずしたりする。ポケットをつまんで裏がえしにする。
  4. 戸を開けたりたたいたりする。近くの物や人に関心を示すしぐさをする。人を威嚇するようなしぐさをする。手慣れた作業(洗濯物をたたむ、皿を並べるなど)をする。
  5. 家の中や外を歩きまわる。家から飛び出す。崖をよじ登る。
観察のポイント

意識が曇るだけの発作と同様に、意識の曇りの状態を観察して下さい。また、発作の時、色々な行動をとることがあるので、どのような動きをしているのか、観察して下さい。

対応

無理に行動を制限すると、過剰に反応したりかえって抵抗することもあるので、危険な場所でなければ、そのまま側に付き添い、様子を観察しましょう。また、椅子など危険と思われる物は、片づけて下さい。日頃から、整理整頓しておくことも大事なことです。

(小笠原まゆみ)加筆