てんかん情報センター

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終わりに

てんかん発作の介助と観察・記録方法について、これまで様々な角度から述べてきましたが、ご理解頂けたでしょうか。

発作の観察や記録は、この病気の治療に不可欠ですが、患者さん本人が行えない場合が大部分です。したがって家族など周囲の人々の援助が重要な役割を果たします。

発作の重積状態を除けば、発作自体が生命を直接、危険にさらすようなことはありません。身体的なケガなどの多くは二次的な受傷によるものです。このような発作時の安全についても、環境の整備などは周囲の人々の配慮なしでは成り立ちません。とりわけ入浴時は、家族の誰かが声をかけるなどの気づかいが必要です。

意識を失ってしまう発作では、患者さん自身は自分の体に何が起きたのか、発作中に自分が一体、何をしたのか、ほとんど分かりません。意識が回復した時、本人の意識のとぎれを、補ってあげるのも周囲の人々なのです。

てんかん治療は、抗てんかん薬による薬物療法が中心です。発作のない安定した状態を保つには、定められた量を定められた時刻に飲まなければなりません。患者さん自身が服薬を管理できない場合は、やはり周囲の人々が時間、量、飲めたかどうかを確認することが必要でしょう。

ところで、過労や睡眠不足などの不規則な日常生活や飲酒などは、てんかん発作を誘発しやすいと言われています。発作の抑制が最終目標だとすれば、てんかんの患者さんにもっとも必要なことは、「規則正しい日常生活」と言えます。しかし例えば、一定の時刻に起床し、また就寝するということは、健康な人にとっても困難なことです。まして、抗てんかん薬服用による副作用を抱える患者さんが「規則正しい日常生活」を送るには、多くの障害があるのは当然です。こういう障害にめげず、発作の抑制に努める事は、患者さん自身の努力がもっとも大事ですが、家族の協力や励ましもおおいに必要です。

てんかんの発症は人格の形成される思春期までに多くみられます。この時期の過保護、過干渉が人格形成に大きな影響を与えることがあります。また発作による受傷を恐れるあまり、患者さんに極端な行動制限が課される場合もあります。人間が社会の中で成長していくには、発達段階に応じた行動ができるように、過度な制限事項は設けず環境を整えるなどをして家族や地域の人々が暖かく見守る必要があるでしょう。

(良知和江)