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第3章 診断

1.発作型と症候群の診断

てんかんの診断は、てんかん発作の発作型の診断と、てんかん症候群の診断の二段構えになっています。

まず患者さんのもつ発作がてんかん発作であると確定したら、てんかん発作国際分類に従ってそれらの発作の発作型を決めます。てんかん発作国際分類では、発作型の決定は臨床症状のみでなく、それに伴う脳波所見を必要とする場合があります(たとえば定型欠神発作 における3ヘルツ棘徐波複合)。したがって、てんかん発作の確定診断には発作時脳波記録が必要であり、できればビデオ・脳波同時記録を施行されることが望まれます。

患者さんのもつ単一または複数のてんかん発作の発作型が確定したら、それらの発作の組み合わせと認知障害や麻痺などの神経学的症候および脳波所見を総合して、てんかん症候群国際分類に従っててんかん症候群の診断がなされます。てんかん症候群の診断がつけば、それに基づいて最も有効な薬物の選択がなされ、また病気の今後の成り行きが予想できます。

外科手術の対象となるかどうか(適応)は、まず症候群診断が全般てんかんか部分てんかん(局在関連てんかん)かによって分かれ、全般てんかんは基本的には外科手術の対象から外れます。さらに部分てんかんの中でも、外科手術によって発作が抑制される可能性の高いもの(たとえば内側型側頭葉てんかん)とあまり高くないものに分かれます。

2.てんかん発作と非てんかん発作の鑑別

てんかんの患者さんがてんかん発作以外に非てんかん発作を兼ねもっていることは意外に多いものです。ところが一度てんかんと診断された後は、その患者さんのもつすべての発作症状がてんかん発作と見なされることが多く、非てんかん発作だけが残存したり増加している場合でも、てんかんが増悪したものと見なされて、抗てんかん薬を増量されたりすることは珍しくありません。そういう場合、実際にはてんかん発作は難治ではないのに「見かけの難治」となってしまいます。

てんかん発作と併存する非てんかん発作を鑑別することは外来診察だけでは難しいこともあり、そういう場合には鑑別診断のために入院精査が必要となります。鑑別診断の結果、残存している発作が非てんかん発作であることが判明すれば、抗てんかん薬を減量することができる可能性があります。また非てんかん発作をてんかん発作と誤って診断され、その抑制のために外科手術を施行されたりしては取り返しのつかないことになるので、非てんかん発作の鑑別は実際には非常に重要であると言えます。

てんかん発作と紛らわしい非てんかん発作にはさまざまな疾患によるものがありますが、保護的な環境で育った難治てんかんの患者さんにおいて特に問題となることが多いのは心因性の発作で、疑似発作または偽発作と呼ばれます。疑似発作は精神医学的にはヒステリー発作(転換性障害、身体表現性障害)に当たるものが多く、発作を訴えることで家族など周囲の保護的な反応が得られるという「疾病利得」があるために、自分で無意識に発作を起こしてしまうものです。したがって本人にとって苦痛な状況において発作の頻度は増えます。患者さんのもつ真のてんかん発作が心理的な負担の結果として出現すると考えている保護者は多いものですが、そのような可能性は否定できないとはいえ、疑似発作の併発を疑ってみる必要があります。疑似発作を真の発作として保護していると、ますますその頻度が増え、患者さんの人格的成熟にとっての障害ともなります。

疑似発作をその発作症状だけから真のてんかん発作と鑑別することは困難です。しかし、てんかん発作の症状はあまり簡単には変化しないものだということは確かなので、短期間の内に次々に異なった症状の発作が出現したときには疑似発作を疑うべきです。

疑似発作には脳波異常は伴わないので、発作時脳波記録は疑似発作の鑑別において有用です。他方、発作時脳波記録でまったく異常所見が認められなくてもやはり真のてんかん発作である場合があることも重要です。脳の深い場所から起こるてんかん発作は、通常の頭皮脳波には現れないことがあるからです。脳波異常が認められないばかりに長年心因性発作と片づけられてきたてんかんの患者さんは少なくありません。

薬物に対する反応が疑似発作の鑑別に役立つこともあります。すなわち抗てんかん薬の投与または増量によって発作の頻度が明らかに減少したなら、その発作は真のてんかん発作である可能性が非常に高いと言えます。反対に抗てんかん薬の増量によって発作の頻度が明らかに上昇したなら、それは薬物の副作用としての気分の変化のために、心因性の疑似発作が増加したという可能性があります。

3.画像検査・脳機能検査

てんかん発作とてんかん症候群の診断は、上に述べたように発作症状と脳波所見によって決定されますが、補助診断として画像検査や脳機能検査が施行されることが特に最近多くなっています。以下にそれらの中でも代表的なものとしてCT・MRI・SPECT・脳磁図について説明します。

(1)CT

CT(Computed Tomography:コンピューター断層撮影)は、身体にX線を照射して得られた陰影から断層写真を構成する技術です。X線の照射量は単純X線写真より多いので、妊娠の可能性のある女性などには慎重に施行されるべき検査です。MRIの登場以後、その役割はMRI検査が必要かどうかを判定する予備検査という意味合いが強くなってきましたが、原理の違いからMRI画像には写らないものがCT画像には写る場合があり(たとえば結節性硬化症で見られる脳の表面の石灰化所見)、現在でもやはりこの検査を欠かすことはできません。

(2)MRI

MRI(Magnetic Resonance Imaging:磁気共鳴画像)は、身体に強い磁場をかけて得られた情報から断層写真を構成する技術です。磁場をかけることによる身体自体への悪影響は知られていませんが、過去の手術などによって身体に金属(磁性体)が入っている場合はその金属が引きつけられて動く可能性があるため、検査ができないことがあります。MRIによって得られる画像はCT画像よりも解像度が良く、またT1・T2・PDなど何種類もの異なった条件で撮像することで多くの情報が得られます。ますます性能の良くなったMRIのおかげで、最近では難治な症候性部分てんかん症例の大部分において、病因と考えられる皮質病変が見つけられるようになってきています。

(3)SPECT(スペクト)

SPECT(Single-Photon Emission Computed Tomography)は、放射性物質を脳細胞に取り込まれやすい物質に結び付けた形で静脈から体内に入れて、血液に運ばれて脳に取り込まれてからそれらが発する放射線の強さを測ることによって、脳の各部における血液循環や代謝の様子を間接的に調べる技術です。発作間歇時にはてんかん原性焦点の血液循環は周囲よりも悪い(低灌流である)ことが多く、他方発作時には周囲よりもさらに良い(高灌流である)ことが多いので、部分てんかんのてんかん原性焦点の局在の確認に有用な検査です。ただし、発作時の画像を得るためには発作の最中に放射性薬剤を静脈に注入しなければならないので、入院している場合でさえかなりの困難を伴います。この検査では放射性物質を体内に入れるので、当然放射線被曝が問題になり、施行回数は制限されます。ただし検査後体内に残った放射性物質は急速に放射能を失い、かつ速やかに尿中に排泄されるので、後遺症についての心配はありません。

(4)脳磁図

脳磁図はMEG(Magnetoencephalography)とも呼ばれ、脳波(EEG;Electroencephalography)が脳から発する電気(電位)を測るのに対して、脳から発する磁場を測る技術です。基本的には脳波の異常に対応する磁場の異常が検出され、その異常活動の発生源の位置をかなりの正確さをもって決めることができます。したがって脳磁図の役割は、脳波検査と画像検査を組み合わせることであると言えます。また視覚・聴覚・体性感覚の責任部位を明らかにすることもできるので、脳に大きな病変がある場合にそれらの機能部位と病変の位置関係を非侵襲的に確認することができます。脳磁図検査は、脳波検査と同じく身体に対する害は一切ありませんが、検査中かなり長時間隔離された部屋(磁気シールドルーム)の中で同じ姿勢を保たねばならないため、じっとしていられない患者さんは麻酔で眠っていただきます。また体内に金属が入っている場合、そこから出るノイズのために検査ができないことがあります。