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第4章 発作の薬物治療

1.難治てんかん

てんかんの薬物治療に関して最も大切なことは、発作型にあった抗てんかん薬を、最大許容量にて十分な期間、様子を見ることです。そのような治療にもかかわらず発作が抑制されない場合には、難治てんかんと考えられます。難治てんかんのてんかん類型は、成人では、症候性部分てんかんが64%、症候性全般てんかんが23%であり、難治例の代表的発作型は、成人では複雑部分発作であると報告されています。

2.てんかんの薬物治療

以下に、てんかんの治療に関してのキーポイントを概説します。

(1)診断及び発作型の確定、原因疾患の精査

まず、認められている発作症状がてんかん発作であることを確定することが重要です。疑似発作をてんかん発作と診断され、各種の抗てんかん薬の投与にもかかわらず発作がコントロールされず、難治てんかんと診断されている症例も少なくありません。つぎに、発作型を確定することが重要です。臨床像が類似していることより複雑部分発作と欠神発作とを誤認したりする場合があります。これらの発作型では使用する抗てんかん薬が異なるため、診断を誤ることにより難治てんかんとされる可能性があります。最後に、基礎疾患の精査が必要です。脳腫瘍等のてんかんを起こしうる脳の器質的病変を、CT、MRIにより鑑別することや、てんかんを起こしうる代謝性疾患の可能性も考慮する必要があります。

(2)治療
1)原因疾患の治療

脳腫瘍などの脳の器質的病変、脳炎などの炎症性疾患に関しては、それに対する治療が必要となります。

2)抗てんかん薬の服用

a)発作型に対する適剤

部分発作に対してはカルバマゼピンが、全般発作に対してはバルプロ酸ナトリウムが第一選択とする報告が多くあります。

部分発作:発作型として、単純部分発作、複雑部分発作、二次性全般化強直間代発作がありますが、選択薬に大きな違いはありません。カルバマゼピンが第一選択薬であり、第二選択薬として、ラモトリギン、レベチラセタム、トピラマート、ゾニサミド、フェノバルビタール、プリミドン、ガバペンチン、フェニトインなどがあげられます。

全般発作:全般性強直間代発作では、バルプロ酸ナトリウムが第一選択薬であり、ゾニサミド、フェノバルビタール、プリミドン、フェニトイン、ラモトリギン、イーケプラ、トピラマートなどが第二選択薬です。欠神発作に対しては、バルプロ酸ナトリウム、エトスクシミドが第一選択薬、クロナゼパム、ラモトリギンなどが第二選択薬。欠神発作と全般性強直間代発作を合併する症例では、バルプロ酸ナトリウム単独で治療を開始することが可能です。強直発作に対しては、ラモトリギン、ゾニサミド、トピラマート、カルバマゼピン、フェニトイン、非定型欠神発作に対してはバルプロ酸ナトリウム、エトスクシミド、脱力発作に対しては、バルプロ酸ナトリウム、クロナゼパム、ミオクロニー発作に対してはバルプロ酸ナトリウム、クロナゼパム、レベチラセタムなどがあげられます。

希少疾患:レノックス・ガストー症候群ではルフィナミド、ドラベ症候群ではスチリペントールが使用できます。

b)服用量、服用間隔

各々の抗てんかん薬の有効血中濃度は、目安であり、個人差があるため、絶対的なものではありません。副作用の出現にも個人差があるため、少量の抗てんかん薬で発作が抑制されない場合には副作用が出現しない最大許容量まで増量する必要があります。有効血中濃度上限にあるために増量を中止する必要はなく、副作用を認めない限りにおいて最大許容量まで少量ずつ増加して、抗てんかん薬の効果を正確に判定する必要があります。また、新たに抗てんかん薬を増量した場合、その血中濃度が安定するまでに、その抗てんかん薬の半減期(一度服用した薬の血中濃度が半分になるまでの時間)の5倍の期間が必要といわれています。そのため、増量による効果は、はやくてもその抗てんかん薬の半減期の5倍の期間経過した後に、判定する必要があります。たとえば、カルバマゼピン、フェニトイン、フェノバルビタールの半減期は、各々7~15時間、24時間、96~144時間で、各々の抗てんかん薬の血中濃度が安定するのに必要な時間は、およそ2日、8日、25日と考えられます。

薬理学的には、半減期の長い抗てんかん薬では、1日1~2回の投与で安定した血中濃度が得られますが、半減期の短い抗てんかん薬では1日3~4回の投与が必要となります。このことは、半減期の短いカルバマゼピンにおいて問題となります。また、バルプロ酸ナトリウム、プリミドン、レベチラセタム、ガバペンチンなどでも同様のことがいえますが、現在では長時間作用性のバルプロ酸ナトリウムがあり、1日1~2回の服用にて安定した血中濃度が得られるようになりました。プリミドンの場合には、それ自体の半減期は短いのですが、代謝産物であるフェノバルビタールの半減期が長いため、血中濃度の変動はカルバマゼピンほど端的ではありません。

c)多剤併用療法

てんかんの治療の原則は、単剤療法です。その利点として、(1)有害な抗てんかん薬の相互作用がない、(2)一般的に副作用が少ない、(3)服薬が規則的になりやすい、(4)発作のコントロールが多剤併用療法より良い場合がある、等があげられます。実際には、副作用を考慮しつつ、発作型に適した第一選択薬を最大許容量まで投与し、発作の抑制が不十分の場合には、第一選択薬内の他の抗てんかん薬に置換して効果を見ます。さらに、単剤による加療で発作のコントロールが不十分な場合には、2種類の抗てんかん薬を併用することが試みられます。ただ多剤療法を行う場合には、徒に抗てんかん薬を追加せず、副作用に注意し、各々の組み合わせを的確に評価する必要があります。

d)副作用

副作用には、その特徴により以下のものがあります。(1)特定の素因を持つ人に見られる過敏反応によるもの(皮疹、肝障害、骨髄抑制等)。過敏反応が抗てんかん薬によるものと確定した場合には、その抗てんかん薬の使用はできなくなります。(2)血中濃度の上昇に伴いだれにでも見られるもの(ふらつき、眠気、複視、悪心、嘔吐など)。服用量の減量や服用法回数の変更にて改善します。(3)長期間の服用により見られるもの(フェニトインによる歯肉増殖、多毛等)。

各々の抗てんかん薬により副作用も異なりますので、主治医より十分に説明を聞き、副作用出現時には医師の診察を受けてください。

e)規則的な服用

不規則服用(怠薬、忘薬)は、てんかんの難治性の大きな要因となります。発作に適した抗てんかん薬を適切量処方されていても、不規則服用すると十分な抗てんかん薬の血中濃度が得られず、発作が抑制されません。不規則服用の原因としては、てんかんの治療に対する認識不足や、副作用に対する過度の不安等が考えられます。主治医より十分にてんかんの治療についての説明をうけ、規則的な抗てんかん薬の服用が重要である事を理解することが大切です。また、抗てんかん薬は長期間服用する必要があり、抗てんかん薬の副作用についての不安もあると思いますが、主治医より十分に副作用についても説明をうけてください。

また、不規則な生活及びそれに伴う睡眠不足等が発作の誘因となる事があるので注意が必要です。

3.終わりに

てんかんの治療では、各々の患者さんにおけるQuality of Life(QOL)を十分に考慮することが重要と思われます。発作がなく、抗てんかん薬による副作用もまったく見られないのが最良の状態といえます。しかし、適切な薬物療法にもかかわらず発作が抑制されない難治てんかんにおいては、てんかん発作(頻度やその症状、発作出現時間)と抗てんかん薬による副作用(眠気、ふらつき等)を考慮し、各々の患者さんにおいて最良のQOLが得られるようにすることが重要と思われます。