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第7章 治療の継続

1.はじめに

てんかんの治療は年余に及びます。てんかん治療の主体は薬物治療です。治療はまず薬剤の選択に始まり、試行錯誤を経て薬剤の種類と用量を決定し、長期にわたって薬剤を服用していくことになります。この長い年月は、薬との付き合いに費やされると言っても過言ではありません。したがって患者さんは発作のみならず自分の薬についてよく知り、薬とうまく付き合っていくことが大切になります。

そこで本章では、治療を継続するうえでの薬に関するいくつかの留意点について述べ、最後に発作が増悪した場合の対処についてつけ加えたいとおもいます。

2.自分の薬を知る

薬は長い間服用し続けなければなりません。旅先で気付いたら薬を持ってくるのを忘れていた、あるいは気付いたら薬が切れていて処方を受けている病院が遠方であるなどというとき、自分の薬の内容をきちんと知っていれば近くで同じ処方を受けることができるのです。また長い治療経過の中で自分の発作に対してどの薬が有効であったかがわかれば、将来の薬剤調整の時に役立ちます。とくに転院などにより主治医がかわるときにはこれらの情報は重要です。発作の経過を記録すると同時に、その時どんな薬を服用していたかを知っていることが大切です。

そのため患者さんは自分が服用している薬剤の名前、用量用法すなわち1日何ミリグラムの薬を何回に分けて飲んでいるかを主治医に確認しましょう。できればメモや手帳に薬品名と用量用法を記入しておくといいでしょう。

3.正しく服用する

抗てんかん薬は決められた用法用量を守って欠かさず服用し続けなければなりません。

しかし、うっかり薬を飲むのを忘れてしまうことはありませんか。このような場合は、たとえば食事などの生活習慣の中に服薬を組み込んでしまう、あるいは服薬時間を決めてしまうなどの工夫をして、とにかく服薬を習慣化することが大事です。

発作が減少しないあるいは増えたということで勝手に薬を増やしたりしてはいけません。薬の効果を判定するには二つの点に注意が必要です。一つは薬の量が充分かどうかということ、二つめは発作を増悪させる要因が他にないかどうかです。薬は服用を始めて有効な血中濃度に達するのにある程度の時間を要します。それ以前に発作が減らないからといって勝手に増量しては、薬の適量を見極める妨げとなる場合があります。薬の量が充分かどうかを判断するためには薬物の血中濃度の測定が必要ですから、主治医に相談しその指示にしたがいましょう。発作を悪化させる要因としては、不規則な生活や睡眠不足、女性では月経などがあります。薬の効果を判断する場合これらの要因を除いて考えることが必要です。

副作用が心配のあまり薬を減らしたり飲まなかったりということがときにみられます。副作用は薬によりそして人により異なります。薬の副作用に対する不安を軽減するためには、出現し得る副作用や副作用発現時の対処法について主治医より充分に説明を受けましょう。そして治療の合理性を理解することが重要です。いずれにしても急な減薬や断薬は発作の増悪を招くことがあり危険です。

4.副作用について

ここで臨床でよく遭遇する副作用について簡単に述べたいと思います。副作用の種類についての解説は以前に記載されていますので省略します。

新しく薬を飲み始めるときや増量中に、眠気、ふらつき、食欲不振などをみとめることがしばしばあります。これらのなかには一過性で症状が消失し薬の増量が可能な場合と、過量中毒のため症状が持続し薬の減量を余儀なくされる場合があります。このようなときは症状と経過を主治医に報告し、薬の調整について指示を受けてください。

まれに発熱や全身の発疹などを認める場合があります。これは過敏反応の可能性もあり、すぐに病院で診察を受けてください。過敏反応であれば急いで薬剤を中止する必要があり、症状に対しては適切な治療が必要となります。

副作用が生じたときは、どの薬をどのくらいの量服用していたかを覚えておくことが、同じことをくり返さないためにも重要です。

幸い予測のできない重篤な過敏反応は比較的まれで、その他の副作用の多くは状態の観察や定期的な血液・尿の検査で発見が可能で、薬剤を調整することにより克服ができます。

5.緊急の場合の対処

ここでは発作重延状態について述べます。

発作重延状態とは発作が長時間におよぶ場合、あるいは発作は長くなくても、発作と発作の間に意識が回復しないまま長い時間にわたって発作がくり返される状態をいいます。

発作重延状態は、全身のけいれん発作のみならず、部分発作や(非定型)欠神発作でもみられます。とくに全身けいれんの発作が重延する場合は生命の危険を伴うこともあり、すみやかに適切な治療がなされなければなりません。

発作重延状態をひき起こす要因として多いのは、抗てんかん薬の急激な中断、抗てんかん薬の不規則な服用による薬物血中濃度の低下、不適切な薬物治療、睡眠不足やアルコールの乱用、感染症などです。とくに薬物の急激な中断や不規則服用が原因となることがしばしばみられます。まれに脳波検査の前に薬を止めるように言う病院があるようです。発作をとらえることを目的とした入院での長時間脳波検査や、発作が消失して脳波の正常化が長年続いた患者さんが治療の終了を目指していく過程で脳波検査の前に減薬をするということはあり得ますが、通常の外来での脳波検査において薬を中止しなければならない理由など全くなく、これは極めて危険なことです。

発作が長引くあるいは発作をくり返す場合の対処ですが、もし発作止めの頓服薬が手許にあれば使用します。とくに発作が群発しやすい人は、主治医と相談して頓服薬を処方してもらい、家族も含め てあらかじめその具体的な使い方の説明を受けておくことが大切です。すなわち発作がどのような状態になったら頓服薬をどのくらい使用するのかということです。しかし家での対処には限界があり、その見極めも大切です。また、突然のことで家に何の備えもない場合があります。このような時には主治医と連絡をとり、あるいは近くの救急外来に連絡し、発作の状況を説明してともかく病院を受診することです。主治医が遠方の場合は、普段から緊急時のために近くの病院を決めておくといいでしょう。ときには主治医からその病院へ患者さんの診断名、現在使用している薬剤、緊急時の処置などを記した紹介状を書いてもらう方法もあります。

緊急で病院を受診した場合、発作の状況(いつからどのように発作が続いているのか)、重延する要因があったかなかったか(当日あるいは最近の服薬状況、薬剤の変更の有無など)、服用している薬剤名と用量などの情報をわかるかぎり伝えることが大切です。