てんかん情報センター

Q&A

はじめてのひきつけ

はじめてけいれん(ひきつけ)を起こしました。てんかん以外にはどのような病気が考えられますか?

脳に何らかの一時的な機能異常が起こると、けいれん(ひきつけ)が生じることがあります。

てんかん以外にも循環、代謝、感染、免疫、腫瘍、変性疾患、薬物の影響などが原因となります。

  1. 循環異常:もやもや病や動脈硬化では、脳の一部の血流が不足することによりけいれんが起こります。もやもや病では泣いたときなど深呼吸を繰り返したときに症状が出やすいという特徴があり、放っておくと脳梗塞や脳出血が起こるので早く見つけて脳血管の治療をする必要があります。動静脈奇形や脳出血でもけいれんが起こるのでCT,MRIなどの画像診断は欠かすことができません。高血圧や脱水、熱中症も脳血流の異常によってけいれんをおこすことがあります。
  2. 代謝:子供では夕食をあまり食べないで寝た翌日の朝食前に低血糖になってけいれんを起こすケトン性低血糖が稀にあります。糖尿病の母から生まれた赤ちゃんは生後しばらくは低血糖になる危険があり、糖尿病でインスリン注射をしておられる方も食事とのバランスが崩れると低血糖をおこしてけいれんする可能性があります。低血糖は急いで糖分を補給しないと脳に永続的な後遺症を残すので速やかに診断する必要があります。また、ナトリウムの含まれない水ばかり多量に飲むと血液中のナトリウムが不足してけいれんが起こりますし、カルシウム不足でもけいれんがおこります。これらの可能性を考え、はじめてけいれんを起こした場合には病院で血液検査を受けることが薦められます。
  3. 脳炎や髄膜炎などの感染症:けいれんに加えて意識障害や発熱、嘔吐などを伴う場合が多くみられます。単にけいれんをとめるだけでなく、脳炎や髄膜炎自身の治療が必要です。背中に針を刺して髄液検査をする必要があります。
  4. 免疫:多発性硬化症、急性播種性髄膜脳炎(ADEM)やSLEなどの膠原病(自己免疫疾患)では脳が炎症を起こすためにけいれんする場合があります。ステロイドホルモンなど免疫を抑制する治療が一般に行われます。
  5. 脳腫瘍:けいれんの原因として忘れてはならないものです。けいれんをきっかけに脳腫瘍が早期に発見されることもあり、頭部画像検査を受けることはとても重要です。腫瘍を切除することで痙攣が起こらなくなる可能性があります。病初期の画像検査で異常に気がつかれなくても経過とともに異常が明らかになる場合もあるので、長い経過の間に画像検査を繰り返すと良い場合があります。
  6. 変性:けいれんに加えて運動障害や知的障害が進行性にみられる場合には、ミトコンドリア病や進行性ミオクローヌスてんかんなどのさまざまな変性疾患を念頭において検査をする必要があります。原因となる疾患によっては特別な治療が有効である場合があります。一部の変性疾患では血液を用いた遺伝子診断が有用です。
  7. 薬物:喘息の治療に使われるテオフィリン製剤は有効血中濃度の範囲にもかかわらずけいれん重積や後遺障害を残す場合があるとされています。一部の解熱鎮痛剤とニューキノロン系合成抗菌剤の併用も痙攣を引き起こす可能性が指摘されています。結核の治療に使われるイソニアジドはビタミンB6を阻害する作用があり、大量に服用するとけいれんすることが知られています。これらはそれぞれに重要な薬ですが、服用に伴ってけいれんが生じた場合には原因である可能性を念頭におく必要があります。

けいれん(ひきつけ)が初めて起こった場合には以上のような可能性を念頭においててんかんを含めた鑑別診断を行い、診断に応じた治療が必要です。十分に調べないままてんかんと思いこんで抗てんかん薬を飲み始めてもこれらの疾患の治療にはなりません。なかなかよくならなかったり、けいれん(ひきつけ)以外にも運動麻痺や失調(ふらつき)を含む様々な神経症状が出現する場合にはより注意深く鑑別する必要があります。これらの鑑別のため、てんかんと診断する前に、病歴聴取、診察、CT、MRIなどの各種画像診断と血液検査はとても重要なのです。